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ヴァレンタインSS ~伏羲~

Tue.19.02.2013
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【!!『王様ノ蝶』本編プレイ後の、閲覧をお勧めいたします!!】
※後日サイトに収納する予定です。
※『ヴァレンタインSS ~アルヴァイン~』はこちら
※『ヴァレンタインSS ~シャーニヤル~』はこちら。 藍帝国、首都州、緑(リュイ)。今日も、雨模様だがこの国では珍しいことではない。
ウカはあまり雨が好きではなかったが、冬に降るこういう雨は嫌いではない。
乾いた空気を潤し、厚い雲は寒さを和らげ、厳しい冬の最中にほっと息をつかせてくれる、優しい雨だ。

しかし、現在、後宮の一室では空気は固く、乾いていた……――



『ヴァレンタイン』なるものをお喋り好きな侍女から聞いて、
上手いこと乗せられた気もするが、チョコレートを作ってみたまではよかった。
自慢ではないが、料理の腕はそれなりだし、あまり機会には恵まれなかったものの、
チョコレートも食べたことがある。

藍の料理よりは、馴染みがあったので、我ながらなかなかの出来で、
いつも世話になっている方々に配ってみた。

そして、もちろん伏羲にも渡した。
見慣れない菓子と、いつまでも慣れないらしい他意の無い好意に、
伏羲は表情こそ変わらないが、早速、不信オーラを露わにした。

『ヴァレンタイン』がなんたるか、単なる好意だから気軽に受け取ればいいのだと、
じっくり説明してようやく手をつけてくれた。

【伏羲】
「そういうことなら……もらってやるか……」

【ウカ】
「それはどうも……」

【ウカ】
(なんで菓子一つ渡すのに、こんな色々弁解しないといけなんだろう……)

今や名実共に、この後宮の浅葱の宮の主であるはずのウカは
よくわからない疲れを覚えて、しみじみとお茶をすすった。

伏羲は初めて口にするチョコレートを一粒づつしげしげ眺めては、口に含む。
何も文句を言わないということは、それなりに気に入ってくれたのだろう。

【伏羲】
「…………」

【ウカ】
「…………?」

言葉は少ないが穏やかなお茶の時間が流れていたが、突然、伏羲の空気が険をはらんだ。
そんな小さな変化に気づいてしまう自分が、伏羲の言葉足らずに拍車をかけている自覚はあるが、
気づいてしまったら無視もできない。

【ウカ】
「……どうしたの?」

【伏羲】
「…………」

【伏羲】
「……紫雲にはやってないよな?」 

【ウカ】
「…………あげたけど?」 

【伏羲】
「………………」

こうして、後宮の一角は一気に冷え切ってしまったのだった。
再びむっすりとして不機嫌を全開にする伏羲に、ウカはあれこれ言ってみたが、ほとんど効き目は無かった。

【ウカ】
「……別に紫雲だけじゃないよ。せっかくだからお世話になってる人にも配ろうっていう、挨拶代わりみたいなものだよ」

【伏羲】
「…………」

ウカはいい加減このへそを曲げた王様の相手に疲れて投げやりな気分になる。

【ウカ】
「……なんで、チョコあげて不機嫌になられなきゃなんないんだよ。理不尽だ……!
ちょっとあまりにも心が狭……、余裕が無……――。
……そんなに気にするようなことじゃないだろ?」

【伏羲】
「…………」

【ウカ】
「ともかく……特別扱いなら十分してるだろ? たかが、菓子の一つや二つで、子供じゃあるまいし……」

【伏羲】
「…………」

【ウカ】
「…………」

【伏羲】
「…………」

【ウカ】
「…………」

しばらく黙って聞いていただけの伏羲だったが、
たんっ! と空っぽになった湯飲みで卓を鳴らし、にわかに声を張る。

【伏羲】
「まったくだな……! おまえの言う通りだ……!!」 

【ウカ】
「……?」

【伏羲】
「私とて、こんな下らないことをいちいち取り沙汰することが、どれだけ愚かしいか自覚はある!
自覚はあるが、腹立たしいものは腹立たしいのだ……!!!!」

【ウカ】
「…………」

【伏羲】
「おまえに腹を立てているのではない。自分の狭量さや、浅はかさに憤慨している!」

【ウカ】
「………………」

今度はウカが黙る番だった。ウカは残ったお茶を一息に飲み干すと口を開いた。

【ウカ】
「……特別、言うつもりはなかったんだけど……
紫雲や、侍女さん達にあげたのと、あんたにあげたのは、別だよ……」

【伏羲】
「…………」

【ウカ】
「あんたのは、ちゃんと……あんた用に、好みとか考えて、あまり甘くしてないし、柑橘の皮を使ったりして、色々……
一番上手くできたのを入れたし……だから……その……、機嫌なおせよ……」

【伏羲】
「……………………そうか」

【ウカ】
「……うん」

ささくれだった空気が一時ほどけたかのように思えた。
しかし、すぐに伏羲はまた何かに気づいたように眉間にしわを寄せて、低く呻いた。

【伏羲】
「………………っ!
くっ……まただ……また、こんな些事で、私は浮ついて……どうしてくれるのだ……おまえ……」

【ウカ】
「よく……わかんないけど……俺のせいなの?」

【伏羲】
「そういっているだろう……私は、そんな器ではないし、そんな器であってはならない。
ここ最近の私はこんな些事に煩わされることが頻々と起こるのだ……解せん……」

【ウカ】
「……それは……一般的には些細なことでも、あんたには些事じゃないってことじゃないの?」

【伏羲】
「そんなことがあるか。私を誰だと思っている」

【ウカ】
「藍帝国、今上陛下、伏羲様と拝しております」

【伏羲】
「その私が、こんな偏重した主観でいちいち一喜一憂してる場合ではないのだ。由々しきことだ」

【ウカ】
「でも、その藍陛下でも、どうにもできないんだから、もう仕方ないって諦めるしかないんじゃないですかね?」

【伏羲】
「……なるほど。それも一理あるな」

【ウカ】
「…………」

居住まいを正して、鷹揚に頷く伏羲に、ウカはこっそりため息をついた。

【伏羲】
「そうだな……王の務めに持ち出さない限り、おまえ以外に害が及ぶこともないだろうしな。
ふむ。ひとまずはそれで看過するとしよう」

【ウカ】
「……俺に害が及ぶのはいいのかよ……」

【伏羲】
「おまえは、特別なのだ」

【ウカ】
「…………」

【伏羲】
「ゆえに……、おまえも私に対して不合理や、浅薄な感情を吐露することを許す。
だから、おまえも甘んじて、私のそれを受止めるがいい」

それなりの付き合いを経て、今ではこれがこの王様なりの、ねじくれた好意であるとわかるようになったが、
あくまでわかるようになっただけだ。

あまり出来のよくないウカの頭の中で、いつもどうにか王様の意図を翻訳しているのだ。
本当にどうにかしないとこの人は翻訳が無いと日常会話もできなくなるのではないかと余計な心配をしてしまう。

【ウカ】
「…………」

【伏羲】
「ふ……不満があるのか?」

それでも、どんなにわかりづらくても確かに自分に向けられる思いがあるから、ウカはこの王様を嫌いになれない。
むしろ、そのわかりにくさ故に、気づいた時に一際深くしみる何かが癖になるのだ。
伏羲はに決して言わないし、紫雲には心底理解できないという顔で見られたが。

【ウカ】
「不満は無いことも無いけど……。
本気で不満だったら、わざわざあんたの為だけになんて、作って無いよ」

【伏羲】
「…………そうか。そうだな。
よし。なら、次は、私だけによこせよ。他の奴にはやるな。いいな?」

【ウカ】
「………………仰せのままに」

【伏羲】
「…………本当にわかっているのか? おまえはすぐ考えも無く、
あちこちで油を売っては、私に狭量さを思い知らせているのだぞ……!
もう少し責任を感じて、反省したらどうなのだ?」

【ウカ】
「…………」

何がきっかけかわからないが、
どうやらまた、伏羲の何かに火が点いたらしい……。

【伏羲】
「方々に愛嬌を売って歩く暇があるなら、どうしてそれを私だけに向けない。
そもそも、私が煩わされるのはおまえだけだ。おまえもそれなりに私に心を割いているのだろうが、
私に比べればどうだ……? 申し開きがあるなら聞くぞ?」

【ウカ】
「………………」

【伏羲】
「おまえも、無為に気を掛けるのは私だけにするべきだろう。不公平というものだ。
そうだろう? どうした。己の至らなさに気づき言葉も無いか?」

【ウカ】
「あ……ああ。俺は、本当にあんたの思いつくことには考えも至らないよ……」

【伏羲】
「ふむ。そうであろう。そうだろうな……
所詮、おまえはそういう奴なのだ……薄情で、愛した男の機微も悟れない鈍重な奴だ」

【ウカ】
(俺が『考え至らない』のはそこじゃねえよ……)

【伏羲】
「それなのに、私は、どうしておまえなのだ……こんなに不合理で、解せぬことは、滅多とない……不可解だ……」

【ウカ】
「……本当に不可解なことばかりだな……」

【伏羲】
「やれやれ……おまえが私だけに煩わされるように考えなければいけないな……面倒な事だ……」

伏羲は大仰にため息をついて、自分でお茶を足しながらぶつぶつ言っている。

【ウカ】
「…………ダメ元で、言ってみるけど。俺は既に、これ以上あんたに煩わされる余地はないよ……?」

【伏羲】
「…………」

伏羲は何でもない顔をして、ギリギリまでお茶を注がれた湯飲みを慎重に口元に運んで、おもむろに口を開いた。

【伏羲】
「…………そ、そんな見えすいた言葉で、この私を煙に巻こうとは見くびられたものだな……」

【ウカ】
「俺は、言葉だけのつもりは無かったんだけどな……
伏羲には伝わってなかったのかなー……」

【伏羲】
「…………」

【ウカ】
「俺は『至らない』かもしれないけど……、伏羲は、俺を甘やかしてくれるよな……?」

【伏羲】
「……何が言いたい……」

【ウカ】
「俺はちゃんと、あんただけに煩わされてるから、他の人のこととかは……お目こぼし頂けませんかね」

【伏羲】
「…………おまえと言うやつは……っ!」

【ウカ】
「……だめ?」

【伏羲】
「…………。いいだろう。他の奴に世話を焼くのを許す。だが私に見つからないようにやれ……
これ以上は妥協せん。交渉もなしだ」

【ウカ】
「ありがとう……伏羲」

【伏羲】
「……なら早速、おまえが口だけではないところを見せてもらうとするか……」

伏羲は残りのチョコを平らげると、ひょいとウカを抱えて寝室に向かう。人一人抱えているとは思えない、揺ぎ無い足取りだった。

【ウカ】
「え……ちょっと……伏羲っ!?」

緑州の冬の雨に似た、穏やかな空気と、ささやかな甘い香りが、間もなく寝室が満ちるだろう。


<END>
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